【SR-407 Signature】
スタックスの主力モデルである Λ(ラムダ)型は、同社のアイコンともいえる
特異なフォルムを持った製品で、最も知名度が高く モデル数も多岐にわたります。
一度は倒産し、異彩を放つ ”静電型 イヤースピーカー” の命運が尽きてしまうところでしたが
同社の有志たちが結集し、新たに立ち上げた ”新生 スタックス” が 社運を賭けて世に問うた
SR-404 Signature /303 Classic の売れ行きが好調で、知名度も グンとアップしました。
その10年後、待ちに待ったフルモデルチェンジを行った製品が SR-507 / 407 Signature / 307 Classic でございます。
当出品物は 3兄弟の次男坊にあたる機種になります。
この製品に限らず、セカンド グレードといったポジションは損な役割を強いられることも多いわけで
存在感が希薄だったことは否めませんが、その内容からすれば、相当な実力機であることは間違いないと思います。
このΛ型、旧来の ノーマルバイアスの頃の 1979年に初登場し、その後のプロバイアス仕様は 1982年ですので
2015年に 現行の Lシリーズ=アドバンスド・ラムダ として刷新されるまで、36年もの長きに渡り
スタックスの屋台骨となり、中心的な役割を果たして参りました。
このシリーズ= SR-507 / 407 Signature / 307 Classic が伝統のラムダ型の最終モデルとなってしまったのでございます。
特筆すべきは、当時 先行発売された兄貴分 ”507”と、同じ発音体ユニットを搭載。
メーカーからすれば、コンポーネントを共有することで、コスト節約に繋がることからの英断だと思います。
SR-507は専用設計ともいえるヘッドアークと本革イヤーパッドを採用しましたので、コストが高くなったのに対し
こちらのSR-407は、今まで通りのヘッドアークと合皮のイヤーパッドを採用したことで価格を抑えたのでございます。
兄貴=SR-507 と 同じ発音体ユニットなわけですが、出力ケーブルはオーディオ全盛期に開発され
現在は廃版となってしまった 単結晶導体=PCOCCを採用している点が大きく異なっております。
その507とは違った、別な魅力を保有しているのは、この出力ケーブルの役割が大きいと感じます。
肝となる発音体ユニットは、刷新され 大幅に進化しました。
心臓部である 発音体/振動膜の、更なる高剛性化に挑み、マテリアルは
スーパーエンプラ(スーパー・エンジニアリング・プラスチック)を採用。
なんと、この当時のフラッグシップ=SR-009と同じ素材の振動膜が使われております。
その発音ユニットごと、強化樹脂でパッケージングしたことで、イヤースピーカー筐体に
初めてボルトで固定することが可能になり(接着剤を併用)より一層の高剛性化が図られました。
きしめん的な出力ケーブルは、各導体間を離した低容量の幅広タイプが採用されていて
出力ケーブルは、現在では絶版となった 貴重な PC-OCC (
単結晶状高純度無酸素銅)
この導体は採算が取れないことから、惜しまれながらも製造停止になってしまった銅材で
千葉工業大学教授である 大野篤美氏が考案した
Ohno Continuous Cast = OCC製法
(
加熱鋳型式連続鋳造法)で造られた 単結晶 無酸素 高純度銅線のことで
古河が「PC-OCC」と商標登録していた関係上、同社が製造したOCC導体が PC-OCCと名乗れるわけです。
この製法で造られた導体は、結晶境界が理論上ゼロという 信号伝達を妨げる要素がない材質で
その奏でる音質が多くのファンを虜にし、サエク/アコリバ/オヤイデ/クリプトン/ハーモニックスなどなど
数々のケーブルメーカーが主力商品に挙って採用していた、たいへん有名な電材でございました。
我が国では 生産国であったが故に、ありふれた印象を持たれるかもしれませんが
海外では、すごぶる高い評価を確立している導体になります。
お約束の(!?)劣化しやすいスポンジですが、アウター側のバックキャビ内はまだまだ健在。
インナー側は劣化の心配のない、現行のメッシュスクリーンでございます。